共犯マジック

2004年11月7日 読書
ISBN:4198921393 文庫 北森 鴻 徳間書店 2004/10 ¥560

 この人の本は初めて買ったと思う。たまたま本屋に平積みになっていて、ちょっと面白そうだと思ったので買ったのだが、この人の作風が全てがこのようなものであるとすれば、ボクには彼の作品は合わなかったということになるのだろうと思う。

 何が合わなかったかというと、全体としてのネタは興味深いし、描かれている個々の短編の内容も、よく調べられていて面白く読めた。でも、登場人物に面白みがないのである。

 鯨統一郎という人の作品に『邪馬台国はどこですか』という作品がある。あれも歴史の真実をそれっぽく語るという意味で、歴史ミステリーとでもいうジャンルがあるとすれば、この作品とある種共通する作品になると思われるのであるが、大きな違いがあるとすれば、あちらは登場人物が面白く、その個性が光っていることであろうと思う。
 それに対して、こちらでは本当に普通の人たちが描かれている。それが意図的であるとしたら、それはそれできちんと描けているという意味では良いのかもしれないが、少なくともボクにとっては面白くない。むしろ、女子高生は女子高生らしく、その登場の背景などもそれっぽく書くと面白かったと思うし、最初に作者が描くときの視点として利用している書店の店員にしても、もうちょっと彼のキャラクターがあっても良かったと思う。

 そろそろ書きすぎているような気もするので結論に入ると、登場人物のキャラが薄く、しかも一つ一つの話にいろいろなことを詰め込みすぎて、面白さが半減している。元々のアイディアなどはとても良いと思えるだけに、もっと読ませる努力というのをして欲しいと思う。

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