ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ !
2007年4月13日 読書
ISBN:4061825259 新書 深水 黎一郎 講談社 2007/04/06 ¥998
メフィスト賞を取るという段階で、新奇なものということになるのかもしれないが、結論から言うと、微妙にいただけない作品だった。
種明かしのところなど、ページ数まで指摘して、「ほら、どうだ。フェアにやってるだろう」という感じを出しているのだが、もともとのネタがネタだけに、それで納得できるかというと、なんだか腑に落ちない部分があるし、そもそもだまされたという感じがない。
ミステリーというのは、意外性があって、また結論が理性的に納得できるものであればあるほど、読者は「ヤラレタ!」と思い、喜ぶのだと思う。
当然、その理性的理解の中には、西澤氏のような異なる世界観の中での理解も含まれる。しかし、今回の作品は異なる世界であるようにも読めるところはあるのだが、その一方で、この世界における事件であるようにも読めるようになっている。そのような状態で、この作品のようにトンデモネタに持っていかれてしまうと、ボクとしては不安定な感を受ける。
意欲的な作品であることは認められる。いかにも挑戦的で、メフィスト賞らしい作品ではあるかもしれない。しかし、プロの作品であるのかといわれたら、ちょっと金返せ感がある。作品の中に出てくる保険の話にしてもそうである。それなりに調べたのかもしれないが、もうちょっと現実の世界をきちんと調べても良かった気がするし、そういう細部の作り込みまでこだわっても、良かった気がする。作品の構成とか、言葉の使い方みたいな、ある種のミステリーファン的な視点からのこだわりだけじゃなくて、普通の小説としての視点からのこだわりも持って欲しかった。そういうところが欠けていることに、ボクはなんとなく素人っぽさを感じた。
また、ボクはこの作品に対して、読む楽しさは感じなかった。途中からは、半分惰性で読むような時間を過ごした。これは、文章力の問題なのか、単に好みの問題なのか、どちらに問題があるのかは知らないが、どちらにしても個人的にはマイナスポイントである。
最近のメフィスト賞は、どうも微妙なのが多いような気がする。前回のもそうだったし、イマイチ買って良かったと思える作品がなくなってきている。新人の発掘というのはそれだけ大変ということなのかもしれないが、もうちょっとうまくやってくれないと、このままなくなっちゃうんじゃないか。そんな不安さえ、ふと感じている。
メフィスト賞を取るという段階で、新奇なものということになるのかもしれないが、結論から言うと、微妙にいただけない作品だった。
種明かしのところなど、ページ数まで指摘して、「ほら、どうだ。フェアにやってるだろう」という感じを出しているのだが、もともとのネタがネタだけに、それで納得できるかというと、なんだか腑に落ちない部分があるし、そもそもだまされたという感じがない。
ミステリーというのは、意外性があって、また結論が理性的に納得できるものであればあるほど、読者は「ヤラレタ!」と思い、喜ぶのだと思う。
当然、その理性的理解の中には、西澤氏のような異なる世界観の中での理解も含まれる。しかし、今回の作品は異なる世界であるようにも読めるところはあるのだが、その一方で、この世界における事件であるようにも読めるようになっている。そのような状態で、この作品のようにトンデモネタに持っていかれてしまうと、ボクとしては不安定な感を受ける。
意欲的な作品であることは認められる。いかにも挑戦的で、メフィスト賞らしい作品ではあるかもしれない。しかし、プロの作品であるのかといわれたら、ちょっと金返せ感がある。作品の中に出てくる保険の話にしてもそうである。それなりに調べたのかもしれないが、もうちょっと現実の世界をきちんと調べても良かった気がするし、そういう細部の作り込みまでこだわっても、良かった気がする。作品の構成とか、言葉の使い方みたいな、ある種のミステリーファン的な視点からのこだわりだけじゃなくて、普通の小説としての視点からのこだわりも持って欲しかった。そういうところが欠けていることに、ボクはなんとなく素人っぽさを感じた。
また、ボクはこの作品に対して、読む楽しさは感じなかった。途中からは、半分惰性で読むような時間を過ごした。これは、文章力の問題なのか、単に好みの問題なのか、どちらに問題があるのかは知らないが、どちらにしても個人的にはマイナスポイントである。
最近のメフィスト賞は、どうも微妙なのが多いような気がする。前回のもそうだったし、イマイチ買って良かったと思える作品がなくなってきている。新人の発掘というのはそれだけ大変ということなのかもしれないが、もうちょっとうまくやってくれないと、このままなくなっちゃうんじゃないか。そんな不安さえ、ふと感じている。
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ISBN:4062705796 単行本 綾辻 行人 講談社 2006/03 ¥2,100
図書館で見かけて、思わず借りた本。単行本サイズなのだが、字が大きいこともあって、中身的にはすごく短くて、なんと1時間で読破してしまった。
この本は、子供向けに書かれたということで、普通のミステリーではないし、全体としての質というか、レベルもそれほど高くない。館シリーズの一つに数えることには反対しないが、やはり大人が読むには物足りなさを感じる。そういう意味では、最近の綾辻氏の館シリーズの伸び悩みにも通じるものを感じる。
ネタバレを避けるために、この作品の問題点を指摘することはしないが、それでもこの作品の性質や、最後のオチなどはいかがなものかと感じられた。犯人は読んでいればなんとなくわかると思うし、ボク自身もどうやってやったかといったところに主眼を置いて読んでいた。しかし、それに対する答えはあまりに稚拙に感じられ、また唐突にも感じられた。個人的にはもうちょっとキチッとした作りを期待していたし、納得できる最後を期待していたのだが、見事に裏切られた。
最後の終わり方も疑問を残すような終わり方で、この後どうなるのだろうといったモヤモヤ感がある訳だが、それがどのような世界観のもとで考えればいいのかがわからない分、より一層イライラさせられた。
そして、最後の作者による読者へのあとがきが、より一層ボクを失望させた。子供向けということを、作者がスランプの言い訳に使っているように感じられたからである。きっと、このネタを館シリーズとして大人向けに書くことはできないだろう。だからこその子供向けなのだろうが、それでも大人向けのネタを子供向けに使うくらいのことをして欲しかった。大人向けには使えないネタだから、子供向けということで使うというのではなく、そんな手抜きのない作品で勝負して欲しかった。そんな意味でも、ボクはこの本を読み終わって、なんかスッキリしない気分になったのであり、それが思わずこんなところに文章を書いている理由でもある。
図書館で見かけて、思わず借りた本。単行本サイズなのだが、字が大きいこともあって、中身的にはすごく短くて、なんと1時間で読破してしまった。
この本は、子供向けに書かれたということで、普通のミステリーではないし、全体としての質というか、レベルもそれほど高くない。館シリーズの一つに数えることには反対しないが、やはり大人が読むには物足りなさを感じる。そういう意味では、最近の綾辻氏の館シリーズの伸び悩みにも通じるものを感じる。
ネタバレを避けるために、この作品の問題点を指摘することはしないが、それでもこの作品の性質や、最後のオチなどはいかがなものかと感じられた。犯人は読んでいればなんとなくわかると思うし、ボク自身もどうやってやったかといったところに主眼を置いて読んでいた。しかし、それに対する答えはあまりに稚拙に感じられ、また唐突にも感じられた。個人的にはもうちょっとキチッとした作りを期待していたし、納得できる最後を期待していたのだが、見事に裏切られた。
最後の終わり方も疑問を残すような終わり方で、この後どうなるのだろうといったモヤモヤ感がある訳だが、それがどのような世界観のもとで考えればいいのかがわからない分、より一層イライラさせられた。
そして、最後の作者による読者へのあとがきが、より一層ボクを失望させた。子供向けということを、作者がスランプの言い訳に使っているように感じられたからである。きっと、このネタを館シリーズとして大人向けに書くことはできないだろう。だからこその子供向けなのだろうが、それでも大人向けのネタを子供向けに使うくらいのことをして欲しかった。大人向けには使えないネタだから、子供向けということで使うというのではなく、そんな手抜きのない作品で勝負して欲しかった。そんな意味でも、ボクはこの本を読み終わって、なんかスッキリしない気分になったのであり、それが思わずこんなところに文章を書いている理由でもある。
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ISBN:406182046X 単行本(ソフトカバー) 東野 圭吾 講談社 1999/02 ¥840
図書館で見かけ、借りてきて読み始めたのだが、なんとなく読んだ気もするし、読んでない気もする。俺も年を取ったもんだ。昔はこんなことはなかったのになぁ……
なんてことを思いつつ、とりあえず最後まで読了してみた。
読者への挑戦と言わんばかりに、最後まで犯人を明かさないというチャレンジは、ある意味賞賛に値する。実際、さらっと読み終わった段階で、ボクは犯人がわからなかった。
ただ、アイデアの斬新さはスゴいにしても、面白かったかと言われると、それがまた微妙。個人的には再読をして、犯人を見つけようという気にはならなかった。
結局、犯人はわからなかったので、ネットで検索をするハメになったのだが、その中で誰かが書いていた、解答編を読みたかったという意見には、共感を覚えた。
解答編をつけると、普通の推理小説になってしまう。だから、彼はそこをなくして新しい試みをしたかったのだろうが、これはやはり一部のマニアをのぞけば、かなり厳しい試みであったのではなかろうか。
というのも、そこまで真剣に推理小説を読み込む人というのは、それほど多くはないと思うからだ。
さらっと読んでいく中で、「もしかしたら」と思うアイデアがなんとなく浮かぶ。しかし、明確な形にはならない。ただ、その『なんとなく』が最後には正しい解答の一部を含んでいたことを知り、それで「俺は解答がわかった」という気になる。そのくらいの方が、推理小説というのは面白いのではないかという気がする。
読者というのは、本当の探偵になりたいのではない。探偵になった気分を味わいたいだけなのだ。そういう意味では、多くの読者にとってはニーズを取り違えた作品になってしまったのではないかという気がするし、その一方で「こんな作品が読みたかった」と拍手喝采している読者もいるであろうことは想像に難くない。
ただ、残念なのは、ボク自身はどちらかというと前者だったことであり、また同様の試みがなされた場合には、挑戦してみたいとは思うものの、半分興味がなかったりもしてしまうのである。
図書館で見かけ、借りてきて読み始めたのだが、なんとなく読んだ気もするし、読んでない気もする。俺も年を取ったもんだ。昔はこんなことはなかったのになぁ……
なんてことを思いつつ、とりあえず最後まで読了してみた。
読者への挑戦と言わんばかりに、最後まで犯人を明かさないというチャレンジは、ある意味賞賛に値する。実際、さらっと読み終わった段階で、ボクは犯人がわからなかった。
ただ、アイデアの斬新さはスゴいにしても、面白かったかと言われると、それがまた微妙。個人的には再読をして、犯人を見つけようという気にはならなかった。
結局、犯人はわからなかったので、ネットで検索をするハメになったのだが、その中で誰かが書いていた、解答編を読みたかったという意見には、共感を覚えた。
解答編をつけると、普通の推理小説になってしまう。だから、彼はそこをなくして新しい試みをしたかったのだろうが、これはやはり一部のマニアをのぞけば、かなり厳しい試みであったのではなかろうか。
というのも、そこまで真剣に推理小説を読み込む人というのは、それほど多くはないと思うからだ。
さらっと読んでいく中で、「もしかしたら」と思うアイデアがなんとなく浮かぶ。しかし、明確な形にはならない。ただ、その『なんとなく』が最後には正しい解答の一部を含んでいたことを知り、それで「俺は解答がわかった」という気になる。そのくらいの方が、推理小説というのは面白いのではないかという気がする。
読者というのは、本当の探偵になりたいのではない。探偵になった気分を味わいたいだけなのだ。そういう意味では、多くの読者にとってはニーズを取り違えた作品になってしまったのではないかという気がするし、その一方で「こんな作品が読みたかった」と拍手喝采している読者もいるであろうことは想像に難くない。
ただ、残念なのは、ボク自身はどちらかというと前者だったことであり、また同様の試みがなされた場合には、挑戦してみたいとは思うものの、半分興味がなかったりもしてしまうのである。
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つっこみ力 ちくま新書 645
2007年3月13日 読書
ISBN:4480063471 新書 パオロ・マッツァリーノ 筑摩書房 2007/02/06 ¥735
なんか書店で人気があるみたいに書いてあったんで買ったんだけど、個人的には大ハズレ。何も得るものはなく、面白くもなく、なんだかよくわからない本だった。
新書といえば、ある程度はきちんとした論説文のようなものを想像しがちであるが、そのわりには、どうも考えがあまりまとまっていない感じで、なんか書いてる人って頭が悪そう。本当だったら、もっときちんと『ツッコミ力』というのを書くべきだった気がするんだけど、書きたいことを適当にちりばめている感じで、それを伝えようという意欲が感じられない。きっと、この人は書きたいことを書き連ねていっただけなんだろう。だから、伝えるという気はあまりない気がする。
それに、なんとなく面白く書こうという感じは伝わってくるんだけど、それがなんだか年配の教授が、「欧米のユーモアっていうのはね」とか、「そもそも笑いというのは……」とか教えながら、ギャグやダジャレを言ったりしているあの感じ。
言いかえれば、笑いのとれないまじめな人が、笑いというものをまじめに研究して、「笑いとは、緊張の後にくる緩和である」みたいなことを論じた上で、こういう風にすれば理論的には笑いが起こるはずだ、ということで書いたようなイメージ。
だから、面白がって欲しいんだろうな、とか、笑って欲しいんだろうな、といったことは感じるものの、なんか笑えないし、面白くもない。本当に読んでみて、「なんだかなぁ〜」というほかなかった。
これって今も売れているのだろうか。題材と題名はいいと思うので、これをもうちょっとうまく書いたら、もっと売れると思うのだが、やっぱりこの人には無理なんだろうなぁ……
なんか書店で人気があるみたいに書いてあったんで買ったんだけど、個人的には大ハズレ。何も得るものはなく、面白くもなく、なんだかよくわからない本だった。
新書といえば、ある程度はきちんとした論説文のようなものを想像しがちであるが、そのわりには、どうも考えがあまりまとまっていない感じで、なんか書いてる人って頭が悪そう。本当だったら、もっときちんと『ツッコミ力』というのを書くべきだった気がするんだけど、書きたいことを適当にちりばめている感じで、それを伝えようという意欲が感じられない。きっと、この人は書きたいことを書き連ねていっただけなんだろう。だから、伝えるという気はあまりない気がする。
それに、なんとなく面白く書こうという感じは伝わってくるんだけど、それがなんだか年配の教授が、「欧米のユーモアっていうのはね」とか、「そもそも笑いというのは……」とか教えながら、ギャグやダジャレを言ったりしているあの感じ。
言いかえれば、笑いのとれないまじめな人が、笑いというものをまじめに研究して、「笑いとは、緊張の後にくる緩和である」みたいなことを論じた上で、こういう風にすれば理論的には笑いが起こるはずだ、ということで書いたようなイメージ。
だから、面白がって欲しいんだろうな、とか、笑って欲しいんだろうな、といったことは感じるものの、なんか笑えないし、面白くもない。本当に読んでみて、「なんだかなぁ〜」というほかなかった。
これって今も売れているのだろうか。題材と題名はいいと思うので、これをもうちょっとうまく書いたら、もっと売れると思うのだが、やっぱりこの人には無理なんだろうなぁ……
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天帝のはしたなき果実
2007年2月11日 読書
ISBN:4061824775 新書 古野 まほろ 講談社 ¥1,680
いわゆる流水大説が好きな人ならば、いけたのかもしれない。しかし、あいにくボクは流水大説が苦手だ。だからだろう。ボクはあまり面白いとは思えなかった。
独特の世界観を持つことは評価しよう。謎解き部分も頑張っていたんじゃないだろうか。しかし、読者をこの世界にどれだけ引き込めたのだろうか。京極夏彦ばりの厚い本を、一気に読ませるだけの力が、この本にあったのだろうか。少なくともボクは、あまり入り込めなかったし、結局この本を読み進めた一番の原動力は義務感だった気がする。
入り込めない理由としてはいくつか考えられるが、その中でもボクにとって大きかったものをあげるとすれば、まずは変な外国語ルビの多用。そして、内輪だけでわかる専門用語や専門知識の多用。そして最後に、それぞれの登場人物のイメージの薄さではないだろうか。
キャラクターとしては、それぞれ特異な人物として描かれているのだが、なぜか人物が目に浮かばない。そして、イメージができない分、それぞれの人物の位置づけがイマイチ理解できない。キャラクターと雰囲気が理解できない分、最後にネタ晴らしがあってもピンとこない。
結局、最後まで読んでみても、なんだかピンとこないし、やられたとか、スッキリしたとかいう感じもない。むしろ、やっと終わったというのが、正直な感想というべきだろうか。
ボクが思うに、このネタであれば、半分ですんだように思う。というか、普通は半分で書くのではないだろうか。それをこの作者は、なんだか知らないが、やたらと引き延ばしまくって、これだけの大作に見せかけてしまった。実際のネタは、その半分のボリュームにしか値しないのにである。だから、飽きてくるし、なんだか全体にぼやけてつまらなくなるし、最後までいっても面白いと思わないのである。
実際、作者に読ませるだけの筆力があれば、同様のことをしても大丈夫だったのだろう。しかし、残念ながら作者にはそこまでの力はなかった。だから、まとめればとても短くなる部分を、何十ページも使って書いてみたりしてしまった時、そのあらが読者にもわかってしまった。それは、本来であれば、最悪の事態であり、デビュー作だから許されるとしても、今後は厳しい批判の目にさらされても仕方のないことであろう。
浦賀さんのような世界観を使い、流水大説のようにダラダラと書いて、島田さんのように歴史的事実も交えながらその裏にあったとされる謎を解く。これはこれで面白いのかもしれないが、これを完成させるには、やはりもっと読ませるだけの筆力が必要であろう。
次回作がどのようなものになるのか、非常に楽しみなところであるが、早々に消えたメフィスト賞作家の仲間入りはしないように、頑張って欲しい。
いわゆる流水大説が好きな人ならば、いけたのかもしれない。しかし、あいにくボクは流水大説が苦手だ。だからだろう。ボクはあまり面白いとは思えなかった。
独特の世界観を持つことは評価しよう。謎解き部分も頑張っていたんじゃないだろうか。しかし、読者をこの世界にどれだけ引き込めたのだろうか。京極夏彦ばりの厚い本を、一気に読ませるだけの力が、この本にあったのだろうか。少なくともボクは、あまり入り込めなかったし、結局この本を読み進めた一番の原動力は義務感だった気がする。
入り込めない理由としてはいくつか考えられるが、その中でもボクにとって大きかったものをあげるとすれば、まずは変な外国語ルビの多用。そして、内輪だけでわかる専門用語や専門知識の多用。そして最後に、それぞれの登場人物のイメージの薄さではないだろうか。
キャラクターとしては、それぞれ特異な人物として描かれているのだが、なぜか人物が目に浮かばない。そして、イメージができない分、それぞれの人物の位置づけがイマイチ理解できない。キャラクターと雰囲気が理解できない分、最後にネタ晴らしがあってもピンとこない。
結局、最後まで読んでみても、なんだかピンとこないし、やられたとか、スッキリしたとかいう感じもない。むしろ、やっと終わったというのが、正直な感想というべきだろうか。
ボクが思うに、このネタであれば、半分ですんだように思う。というか、普通は半分で書くのではないだろうか。それをこの作者は、なんだか知らないが、やたらと引き延ばしまくって、これだけの大作に見せかけてしまった。実際のネタは、その半分のボリュームにしか値しないのにである。だから、飽きてくるし、なんだか全体にぼやけてつまらなくなるし、最後までいっても面白いと思わないのである。
実際、作者に読ませるだけの筆力があれば、同様のことをしても大丈夫だったのだろう。しかし、残念ながら作者にはそこまでの力はなかった。だから、まとめればとても短くなる部分を、何十ページも使って書いてみたりしてしまった時、そのあらが読者にもわかってしまった。それは、本来であれば、最悪の事態であり、デビュー作だから許されるとしても、今後は厳しい批判の目にさらされても仕方のないことであろう。
浦賀さんのような世界観を使い、流水大説のようにダラダラと書いて、島田さんのように歴史的事実も交えながらその裏にあったとされる謎を解く。これはこれで面白いのかもしれないが、これを完成させるには、やはりもっと読ませるだけの筆力が必要であろう。
次回作がどのようなものになるのか、非常に楽しみなところであるが、早々に消えたメフィスト賞作家の仲間入りはしないように、頑張って欲しい。
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密室殺人ゲーム王手飛車取り
2007年1月20日 読書
ISBN:4061825135 新書 歌野 晶午 講談社 ¥1,040
今月は講談社ノベルスが大漁で、お金がかかって仕方がない。その中で、さっき読み終わったのがコレ。本当は、森先生のを先に読んだので、そちらを書こうと思ったのだが、読んだらこっちを書きたくなったので、こちらを先に書くことにした。ということで、感想。
読むのに、実に一日。というか、行きの電車で読み始めて、帰りの電車とさっき空いた時間で読了。そういう意味では、非常に読みやすかったし、ハマった。
話の展開もスムーズで、ネタが読めるところもあったり、読めないところもあったりで、なかなか楽しませてもらえた。
そういう意味では、なかなか会心の作と思われ、久しぶりにミステリーらしいミステリーを読んだような気がした。
何しろ、森先生をはじめとして、なんだか最近はストーリー重視の作品が多く、キャラクターで読ませるのはよいのだが、ミステリーっぽい驚きとかは、ちょっと弱くなってきている。そういう意味では、この作品はミステリーらしさが感じられ、なかなか良いように思われた。
ただし、これはネタバレになるからあまり書けないが、最終章の評価は微妙。この最終章こそが、いろいろなところと結びつくような気がするので、重要であるような気はする。また、最終章がなかったとすると、この展開は始まる前から読めているところがあるので、これで終わるのも微妙。しかし、そうであったとしても、この終わり方自体も微妙という意味では、終わらせ方の難しさというのが感じられた。
ボクは、再読するかどうかということを、本の評価に換えることが多い。そういう意味では、今のところ、再読したいとは思っていない。これは、綾辻氏の昔の作品のように、読者に対して伏線を提示しているというのではなく、作中人物に対して伏線が提示され、その解答が示されるという構造になっていることによるような気がする。その作中人物同士で解明された結末に対して、その外にいるボクは、もう納得するよりほかなく、作中人物同士で伏線が回収され、ネタ晴らしがされていくことによって、もうそれ以上の解答はないように思わされている。いや、思わされているだけなのかもしれないが、ボクとしては満足した状態になっている。だからこそ、もう読まなくてもいいような気になっているのではないかという気がする。
この作品に続編が作られることはもうないのだろうが、なんか続編が読みたいような気がする。しかし、その一方で続編ができたら失望するだろうという強い確信にも似た感情を抱いており、このような二重人格状態に置かれたボクは、もうきっと一人二役で、この作品の評価については議論をし続けるしかないのだろうと思う。
今月は講談社ノベルスが大漁で、お金がかかって仕方がない。その中で、さっき読み終わったのがコレ。本当は、森先生のを先に読んだので、そちらを書こうと思ったのだが、読んだらこっちを書きたくなったので、こちらを先に書くことにした。ということで、感想。
読むのに、実に一日。というか、行きの電車で読み始めて、帰りの電車とさっき空いた時間で読了。そういう意味では、非常に読みやすかったし、ハマった。
話の展開もスムーズで、ネタが読めるところもあったり、読めないところもあったりで、なかなか楽しませてもらえた。
そういう意味では、なかなか会心の作と思われ、久しぶりにミステリーらしいミステリーを読んだような気がした。
何しろ、森先生をはじめとして、なんだか最近はストーリー重視の作品が多く、キャラクターで読ませるのはよいのだが、ミステリーっぽい驚きとかは、ちょっと弱くなってきている。そういう意味では、この作品はミステリーらしさが感じられ、なかなか良いように思われた。
ただし、これはネタバレになるからあまり書けないが、最終章の評価は微妙。この最終章こそが、いろいろなところと結びつくような気がするので、重要であるような気はする。また、最終章がなかったとすると、この展開は始まる前から読めているところがあるので、これで終わるのも微妙。しかし、そうであったとしても、この終わり方自体も微妙という意味では、終わらせ方の難しさというのが感じられた。
ボクは、再読するかどうかということを、本の評価に換えることが多い。そういう意味では、今のところ、再読したいとは思っていない。これは、綾辻氏の昔の作品のように、読者に対して伏線を提示しているというのではなく、作中人物に対して伏線が提示され、その解答が示されるという構造になっていることによるような気がする。その作中人物同士で解明された結末に対して、その外にいるボクは、もう納得するよりほかなく、作中人物同士で伏線が回収され、ネタ晴らしがされていくことによって、もうそれ以上の解答はないように思わされている。いや、思わされているだけなのかもしれないが、ボクとしては満足した状態になっている。だからこそ、もう読まなくてもいいような気になっているのではないかという気がする。
この作品に続編が作られることはもうないのだろうが、なんか続編が読みたいような気がする。しかし、その一方で続編ができたら失望するだろうという強い確信にも似た感情を抱いており、このような二重人格状態に置かれたボクは、もうきっと一人二役で、この作品の評価については議論をし続けるしかないのだろうと思う。
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予告探偵―西郷家の謎
2006年4月15日 読書
ISBN:4125009244 新書 太田 忠司 中央公論新社 2005/12 ¥945
この作家さんの名前はよく本屋で見かけていて、もしかしたら今までにも何冊か買っていたのかもしれないけど、たまたま本屋で目について、今回興味を引かれて買ったのがこの本。最初、この作家さんについての予備知識も、この小説の世界観とかも、まったく分からないまま読んでいたので、ちょっと違和感があったのだけど、最後の最後に謎が解け、さらに作家自身の経歴も分かって、すごく納得。そういう意味では、かなり珍しいタイプのミステリーだった。
読後感としては、非常に懐かしい感じで、今はお亡くなりになった某先生を思い出した。昔、はまったなぁ、って感じ。でも、あとからこの人の経歴を見たら、この人ってそういう人だったのね。なんかすごい納得。まさに師匠の読後感を受け継いでいるな、と思いました。もう大先生の新刊が出ることはないので、これからはこの人の本を読んでみてもいいかなと思いました。
この作家さんの名前はよく本屋で見かけていて、もしかしたら今までにも何冊か買っていたのかもしれないけど、たまたま本屋で目について、今回興味を引かれて買ったのがこの本。最初、この作家さんについての予備知識も、この小説の世界観とかも、まったく分からないまま読んでいたので、ちょっと違和感があったのだけど、最後の最後に謎が解け、さらに作家自身の経歴も分かって、すごく納得。そういう意味では、かなり珍しいタイプのミステリーだった。
読後感としては、非常に懐かしい感じで、今はお亡くなりになった某先生を思い出した。昔、はまったなぁ、って感じ。でも、あとからこの人の経歴を見たら、この人ってそういう人だったのね。なんかすごい納得。まさに師匠の読後感を受け継いでいるな、と思いました。もう大先生の新刊が出ることはないので、これからはこの人の本を読んでみてもいいかなと思いました。
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ISBN:4061824805 新書 姉小路 祐 講談社 2006/04/07 ¥903
久しぶりに本屋へ行って、ミステリーを買いだめしてきた。ということで、講談社ノベルス4月の新刊から、まず読んだのがこれ。
雰囲気的に、『Q.E.D.シリーズ』とかぶっているのかな、とは思ったのだけど、実際に読んでみるとちょっと違って、個人的にはあちらの方が好き。というよりも、単発ものとシリーズものの違いなのかな。
こういうのって、まずは民俗学的なネタがあって、それをどうやってミステリーのストーリーとくっつけていくかっていう話だと思うんだけど、今回のこの話は、民俗学的なネタの方はそれなりに面白いんだけど、ミステリーのストーリーの部分がイマイチ面白くない。っていうか、薄っぺらいのが見えちゃう感じ。
『Q.E.D.シリーズ』も、それほどミステリー部分やストーリー展開の部分がしっかりしている訳じゃないし、どちらかというと民俗学的なネタの部分で読ませる本だと思うんだけど、それでも飽きさせない程度のストーリーは持たせているように思う。でも、こちらは民俗学的なネタを展開させるためのストーリー運びの部分に、やたら時間がかかってしまって、ミステリー的なストーリーの部分がかなり唐突に展開したりしてしまっている。だから、なんだかすごく読んでいても違和感がある。
今回のこの本は、民俗学的なネタの部分が面白かったので、これはこれでありだと思うのだけど、これだったら『Q.E.D.シリーズ』で読んでみたかった気がする。違う人が同じネタをモトにミステリーを書いたら、どれくらい違ってくるのか。この分野がミステリーとして確立し、得意とする作家がたくさん出てきたら、そういう企画も面白いと思うのだが、そのうちどこかでやってはくれないだろうか?
久しぶりに本屋へ行って、ミステリーを買いだめしてきた。ということで、講談社ノベルス4月の新刊から、まず読んだのがこれ。
雰囲気的に、『Q.E.D.シリーズ』とかぶっているのかな、とは思ったのだけど、実際に読んでみるとちょっと違って、個人的にはあちらの方が好き。というよりも、単発ものとシリーズものの違いなのかな。
こういうのって、まずは民俗学的なネタがあって、それをどうやってミステリーのストーリーとくっつけていくかっていう話だと思うんだけど、今回のこの話は、民俗学的なネタの方はそれなりに面白いんだけど、ミステリーのストーリーの部分がイマイチ面白くない。っていうか、薄っぺらいのが見えちゃう感じ。
『Q.E.D.シリーズ』も、それほどミステリー部分やストーリー展開の部分がしっかりしている訳じゃないし、どちらかというと民俗学的なネタの部分で読ませる本だと思うんだけど、それでも飽きさせない程度のストーリーは持たせているように思う。でも、こちらは民俗学的なネタを展開させるためのストーリー運びの部分に、やたら時間がかかってしまって、ミステリー的なストーリーの部分がかなり唐突に展開したりしてしまっている。だから、なんだかすごく読んでいても違和感がある。
今回のこの本は、民俗学的なネタの部分が面白かったので、これはこれでありだと思うのだけど、これだったら『Q.E.D.シリーズ』で読んでみたかった気がする。違う人が同じネタをモトにミステリーを書いたら、どれくらい違ってくるのか。この分野がミステリーとして確立し、得意とする作家がたくさん出てきたら、そういう企画も面白いと思うのだが、そのうちどこかでやってはくれないだろうか?
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帝都東京・隠された地下網の秘密
2006年3月2日 読書
ISBN:4101263515 文庫 秋庭 俊 新潮社 2006/01 ¥660
やべぇ、トンデモ本だ!まだ全部読み終わっていないけど、はっきり言って、全部読み切る自信なし。だって、一言で終わってしまうような話なんだもの。
この本に書かれていることって、ずいぶん前から、たまにテレビなんかで放送されてることでしょ。きっとこの筆者だけが言ってるんだと思うんだけど、東京には元々地下網があって、今の地下鉄はそれを利用して作られてるんだという話。そして、地図の中で地下鉄の走っている場所が、会社によって違うように描かれていることを指摘して、陰謀があったとかいうことを言い出す。
まあ、こういうのはねぇ、本当にキリがないんですよ。だって、当事者に聞いて、それが否定されても、「いや、もっと上層部の人間しか知らないトップシークレットなんだ」と言えば済んじゃうし、それこそトップに聞いたとしても、「ウソがうまいなぁ。本当のことを言ってくださいよ」という話になるだけ。だから、どこまで行っても終わりがない。
正直な話、ボクは思いましたよ。すごく簡単な結論を一つ。
「最初に誰かが間違えたんじゃない?」
やべぇ、トンデモ本だ!まだ全部読み終わっていないけど、はっきり言って、全部読み切る自信なし。だって、一言で終わってしまうような話なんだもの。
この本に書かれていることって、ずいぶん前から、たまにテレビなんかで放送されてることでしょ。きっとこの筆者だけが言ってるんだと思うんだけど、東京には元々地下網があって、今の地下鉄はそれを利用して作られてるんだという話。そして、地図の中で地下鉄の走っている場所が、会社によって違うように描かれていることを指摘して、陰謀があったとかいうことを言い出す。
まあ、こういうのはねぇ、本当にキリがないんですよ。だって、当事者に聞いて、それが否定されても、「いや、もっと上層部の人間しか知らないトップシークレットなんだ」と言えば済んじゃうし、それこそトップに聞いたとしても、「ウソがうまいなぁ。本当のことを言ってくださいよ」という話になるだけ。だから、どこまで行っても終わりがない。
正直な話、ボクは思いましたよ。すごく簡単な結論を一つ。
「最初に誰かが間違えたんじゃない?」
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自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか
2006年2月13日 読書
ISBN:4413090101 文庫 岡本 太郎 青春出版社 1993/08 ¥490
すごい。本当にすごい本だ!!
今まで岡本太郎といえば、「芸術は爆発だ!」とか言って、訳のわかんないものを作ってるおじさんというイメージしかなかった。でも、この本を読んで、その印象が一気に吹っ飛んだ。ボクは、彼の言葉を読んで、なんだかわからないけどすごいと思った。いや、こういう時代にこそ、きっと生きる言葉なのだということを、なんとなく感じたと言おうか。彼の生きた時代においては、きっと彼の言葉は一般人に当てはまることはなかっただろう。しかし、今のような時代の変革期においては、多くの人に当てはまる言葉になっているように思う。
産まれるのが早すぎたのだろうか。いや、あの時代にこういうことを言っているからこそ、非凡だったとも言えるのだろう。ボクは、何か座右の書を作りたいと思い続けてきたが、ようやく巡り会った思いがした。
すごい。本当にすごい本だ!!
今まで岡本太郎といえば、「芸術は爆発だ!」とか言って、訳のわかんないものを作ってるおじさんというイメージしかなかった。でも、この本を読んで、その印象が一気に吹っ飛んだ。ボクは、彼の言葉を読んで、なんだかわからないけどすごいと思った。いや、こういう時代にこそ、きっと生きる言葉なのだということを、なんとなく感じたと言おうか。彼の生きた時代においては、きっと彼の言葉は一般人に当てはまることはなかっただろう。しかし、今のような時代の変革期においては、多くの人に当てはまる言葉になっているように思う。
産まれるのが早すぎたのだろうか。いや、あの時代にこういうことを言っているからこそ、非凡だったとも言えるのだろう。ボクは、何か座右の書を作りたいと思い続けてきたが、ようやく巡り会った思いがした。
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ISBN:4344009223 新書 麻耶 雄嵩 幻冬舎 2006/01 ¥880
久しぶりに新書の麻耶雄嵩を見つけ、迷わずに買ってしまった。そして、いつものごとく一気に読了。でも、読後の感想としては、ちょっと残念なものになった。
どのようなトリックなのか。もしかしたら、また「夏と冬の奏鳴曲」のような世界が繰り広げられるのか。そんな期待を抱きながら読み始めたボクだったが、結果としてはかなり理性的な仕立てになっていた。一部、狂気の世界が描かれているのだが、それも次第に理性的な世界へと還元されていく。そういう意味では、まっとうなミステリーになったとも言えるのだが、ファンとしてはその読み応えが少し残念だった。
読み終わったあと、なんか物足りなさを感じたボクは、少し最初から読み返してみた。すると、非常に計算された、というか、計算されつくされた作品であることがわかってきた。
しかし、その計算は絶妙に計算されすぎていた。いろんなところにダブルミーニングがあるのだが、嘘がない。破綻してない。だから、本当にどちらで読んでも問題がない。言い換えれば、そこに気が付いたとしても、論理的につなげて読めてしまうのだ。これは、あとから読んでもイマイチ面白くない。なぜかというと、「ああ、ここにこんな風に書いてあったじゃないか!」という悔しさがないからである。自分の読んだ読み方が、否定はされていない以上、その可能性は残ってしまい、両方の可能性がある以上、自分は間違っていないと言い張ることができる。そうなると、騙されるというか、自分の見逃しを突かれるという、本格ミステリーの醍醐味が半減してしまう。
これは個人的な意見ではあるが、ボクとしてはもうちょっと作者流の読み方に偏った書き方をして欲しかった。ダブルミーニングを意図させるとしても、よく読むと作者の求める読み方しかできないようにして欲しかった。そこが、微妙にボクを失望させ、計算しつくした、その本格ミステリーを書くにあたっての技術力は評価するものの、作品としての評価は少々低くならざるを得なかった。
この作品については、その計算されている部分について、高く評価をする人もいるだろう。しかし、それがなんとなく彼の持ち味を損なっているようにも感じられ、ボクは少々残念な気持ちになったのであった。
久しぶりに新書の麻耶雄嵩を見つけ、迷わずに買ってしまった。そして、いつものごとく一気に読了。でも、読後の感想としては、ちょっと残念なものになった。
どのようなトリックなのか。もしかしたら、また「夏と冬の奏鳴曲」のような世界が繰り広げられるのか。そんな期待を抱きながら読み始めたボクだったが、結果としてはかなり理性的な仕立てになっていた。一部、狂気の世界が描かれているのだが、それも次第に理性的な世界へと還元されていく。そういう意味では、まっとうなミステリーになったとも言えるのだが、ファンとしてはその読み応えが少し残念だった。
読み終わったあと、なんか物足りなさを感じたボクは、少し最初から読み返してみた。すると、非常に計算された、というか、計算されつくされた作品であることがわかってきた。
しかし、その計算は絶妙に計算されすぎていた。いろんなところにダブルミーニングがあるのだが、嘘がない。破綻してない。だから、本当にどちらで読んでも問題がない。言い換えれば、そこに気が付いたとしても、論理的につなげて読めてしまうのだ。これは、あとから読んでもイマイチ面白くない。なぜかというと、「ああ、ここにこんな風に書いてあったじゃないか!」という悔しさがないからである。自分の読んだ読み方が、否定はされていない以上、その可能性は残ってしまい、両方の可能性がある以上、自分は間違っていないと言い張ることができる。そうなると、騙されるというか、自分の見逃しを突かれるという、本格ミステリーの醍醐味が半減してしまう。
これは個人的な意見ではあるが、ボクとしてはもうちょっと作者流の読み方に偏った書き方をして欲しかった。ダブルミーニングを意図させるとしても、よく読むと作者の求める読み方しかできないようにして欲しかった。そこが、微妙にボクを失望させ、計算しつくした、その本格ミステリーを書くにあたっての技術力は評価するものの、作品としての評価は少々低くならざるを得なかった。
この作品については、その計算されている部分について、高く評価をする人もいるだろう。しかし、それがなんとなく彼の持ち味を損なっているようにも感じられ、ボクは少々残念な気持ちになったのであった。
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ISBN:4061824279 新書 矢野 龍王 講談社 2005/04/06 ¥998
買っておいて忘れていたらしい。本棚を整理していたら出てきたので、今日はコレを読んでみた。
少々ネタバレになるが、内容としては現代版の「そして誰もいなくなった」といったところ。まあ、これくらいは帯なんかを見ても想像がつくと思うが、ボクもそのつもりで読んでいたにもかかわらず、犯人を見逃してしまった。そういう意味では、意外性があったのでマル。
ただ、イマイチ面白さはない。それと、やられたという爽快感もない。後味も悪い。だから、読んでよかったかと言われると、かなり微妙だし、また読むかと言われると、きっと読まない。
でも、かといってブックオフに持っていくような駄作でもないので、とりあえず本棚には置いておきたいところ。
まあ、要は好みじゃなかったということで終わりかな?
買っておいて忘れていたらしい。本棚を整理していたら出てきたので、今日はコレを読んでみた。
少々ネタバレになるが、内容としては現代版の「そして誰もいなくなった」といったところ。まあ、これくらいは帯なんかを見ても想像がつくと思うが、ボクもそのつもりで読んでいたにもかかわらず、犯人を見逃してしまった。そういう意味では、意外性があったのでマル。
ただ、イマイチ面白さはない。それと、やられたという爽快感もない。後味も悪い。だから、読んでよかったかと言われると、かなり微妙だし、また読むかと言われると、きっと読まない。
でも、かといってブックオフに持っていくような駄作でもないので、とりあえず本棚には置いておきたいところ。
まあ、要は好みじゃなかったということで終わりかな?
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パラドックス学園 開かれた密室
2006年1月23日 読書
ISBN:4334076254 新書 鯨 統一郎 光文社 2006/01/21 ¥840
久しぶりの鯨統一郎。相変わらず訳がわからなかった。
この本はどうやらミステリアス学園の続編のような位置づけらしく、ミステリアス学園のラストとつながる形で話が始まる。
そして、結末もある意味ではミステリアス学園に似ていて、新しい形の犯人に挑戦している。その出来はなかなか良くて、ネタばらしをされたときは、なるほどと思ったが、その性質上、万人を納得させられるトリックではないのが残念である。
でもまあ、よく考えられてるなといった感じで、感心はさせられる。ただ、いかんせん面白くない。いや、これを面白いという人もいるのだろうが、少なくともボクには話が難しすぎて、楽しめない。きっと一部のマニア向けの本なのだろうと思うが、もうちょっと一般読者も楽しめるような本にするわけにはいかなかったのかなぁ。
久しぶりの鯨統一郎。相変わらず訳がわからなかった。
この本はどうやらミステリアス学園の続編のような位置づけらしく、ミステリアス学園のラストとつながる形で話が始まる。
そして、結末もある意味ではミステリアス学園に似ていて、新しい形の犯人に挑戦している。その出来はなかなか良くて、ネタばらしをされたときは、なるほどと思ったが、その性質上、万人を納得させられるトリックではないのが残念である。
でもまあ、よく考えられてるなといった感じで、感心はさせられる。ただ、いかんせん面白くない。いや、これを面白いという人もいるのだろうが、少なくともボクには話が難しすぎて、楽しめない。きっと一部のマニア向けの本なのだろうと思うが、もうちょっと一般読者も楽しめるような本にするわけにはいかなかったのかなぁ。
ISBN:4061824643 新書 高田 崇史 講談社 2006/01 ¥977
新刊が、出ると気になる、講談社ブックス(字余り!)
ということで、新年も新刊を見つけるなり思わず買っていたボク。早速、1冊目を読了でございます。
もう話のパターンみたいなモノは、いつも通りだからどうでもいいとして、民俗学的ウンチクは、いつものことながら読んでいて面白い。いわゆるミステリーの部分、つまり殺人事件のところなんかは、それほど出来がいいという訳ではないと思うし、きっとこの作品自体はシリーズの他の作品の中に埋もれてしまう一冊になるのだと思うのだけど、わざわざあの懐かしい袋とじにしてまで隠した事件解決後の本当の謎解きには、「へぇ!」と思わされてしまった。
まあ、それが真実を示しているかと言われれば、個人的にはその当時の技術でそこまで正確にやるのは無理じゃないのかなと言いたくなるのであるが、そんなことを言うのは野暮というモノ。このシリーズは「へぇ!」と驚いた者勝ちなのであって、その方が楽しめるのである。
だから、これから読む人が、この文章を読んだなら、ぜひ袋とじの中身については素直に驚いて欲しい。そして、あまり真剣にツッコミを入れるような野暮なことはしないで欲しい。そうすることが、この本の魅力を一番味わったことになるのだと思うし、自分自身も楽しい気分で終われるのであろうから。
新刊が、出ると気になる、講談社ブックス(字余り!)
ということで、新年も新刊を見つけるなり思わず買っていたボク。早速、1冊目を読了でございます。
もう話のパターンみたいなモノは、いつも通りだからどうでもいいとして、民俗学的ウンチクは、いつものことながら読んでいて面白い。いわゆるミステリーの部分、つまり殺人事件のところなんかは、それほど出来がいいという訳ではないと思うし、きっとこの作品自体はシリーズの他の作品の中に埋もれてしまう一冊になるのだと思うのだけど、わざわざあの懐かしい袋とじにしてまで隠した事件解決後の本当の謎解きには、「へぇ!」と思わされてしまった。
まあ、それが真実を示しているかと言われれば、個人的にはその当時の技術でそこまで正確にやるのは無理じゃないのかなと言いたくなるのであるが、そんなことを言うのは野暮というモノ。このシリーズは「へぇ!」と驚いた者勝ちなのであって、その方が楽しめるのである。
だから、これから読む人が、この文章を読んだなら、ぜひ袋とじの中身については素直に驚いて欲しい。そして、あまり真剣にツッコミを入れるような野暮なことはしないで欲しい。そうすることが、この本の魅力を一番味わったことになるのだと思うし、自分自身も楽しい気分で終われるのであろうから。
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鋼の錬金術師(12) 初回限定特装版
2005年12月2日 読書 コメント (1)
ISBN:4757515499 コミック 荒川 弘 スクウェア・エニックス 2005/11 ¥600
買ってしまいましたよ、ハガレン。ただ、付録の4コマはちょっとイマイチだったかな、うん。ボク的にはあまり面白くなかった。
本編も読んだんだけど、なんだか訳わかんない方にいってるね。キン肉マン方式で、だんだんとシリアスなかたい話になっていってる感じ。やっぱり、魔法陣グルグルみたいな、お馬鹿な雰囲気を保ち続けるっていうのは難しいんだろうな。
ただ、ボクとしてはやっぱり、面白いハガレンの方が好きだったし、戦闘シーン満載のハガレンはちょっとイマイチ。ギャグ部分を付録の4コママンガで補われても、ちょっとねぇ……って感じ。
さて、このままハガレンを買い続けるのか。それともキン肉マンや、沈黙の艦隊などのように尻つぼみに買わなくなっていくのか。そろそろ試練の時が来ているのかもしれない。
買ってしまいましたよ、ハガレン。ただ、付録の4コマはちょっとイマイチだったかな、うん。ボク的にはあまり面白くなかった。
本編も読んだんだけど、なんだか訳わかんない方にいってるね。キン肉マン方式で、だんだんとシリアスなかたい話になっていってる感じ。やっぱり、魔法陣グルグルみたいな、お馬鹿な雰囲気を保ち続けるっていうのは難しいんだろうな。
ただ、ボクとしてはやっぱり、面白いハガレンの方が好きだったし、戦闘シーン満載のハガレンはちょっとイマイチ。ギャグ部分を付録の4コママンガで補われても、ちょっとねぇ……って感じ。
さて、このままハガレンを買い続けるのか。それともキン肉マンや、沈黙の艦隊などのように尻つぼみに買わなくなっていくのか。そろそろ試練の時が来ているのかもしれない。
ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い
2005年11月8日 読書
ISBN:4061824007 新書 西尾 維新 講談社 2005/11/08 ¥1,134
本屋で見つけて早速読了。
結論としては、まあ、こんなもんじゃないでしょうか。個人的には、もうちょっと詳細に書いて欲しかった気はするけど、とりあえず終わったという感じ。ちょっとした物足りなさと終わったという満足感とが相まった複雑な読後感であります。
読んでみて、きっと作者は世界を広げすぎたんだな、という印象を受けた。いろんなことに解答を出し切れないまま終わった気がする。これからまた外伝があるのか。それとも、今までに出したヒントから読者が想像することを望んでいるのか。どちらにしろ、普通の一般的な読者では、解答を知らないまま、または読み取れないまま終わったことが多いのではないかと思う。
それを非難するつもりはないし、これはこれで良かったのだという気がする。多くの謎に対する解答編とはなり得なかったかもしれないが、シリーズ最終巻としての役割は十分に果たしている。だから、シリーズをずっと読んできた人には、やはりある種の満足感を与えてくれると思うし、逆に一つのミステリーとして完成度を求める人には多くの不満を与えるかもしれない。
ボクはその両方をあわせて感じた一人ではあるのだが、とりあえずは読み終えて満足している。ただ、現段階では再読をする気はしない。これはシリーズ全体についてである。そういう意味では、ちょっとシリーズ全体の価値を低める最終巻になってしまった気がして、もうちょっと違う最終巻もあり得たのではないかと、少し残念な気もしている。
本屋で見つけて早速読了。
結論としては、まあ、こんなもんじゃないでしょうか。個人的には、もうちょっと詳細に書いて欲しかった気はするけど、とりあえず終わったという感じ。ちょっとした物足りなさと終わったという満足感とが相まった複雑な読後感であります。
読んでみて、きっと作者は世界を広げすぎたんだな、という印象を受けた。いろんなことに解答を出し切れないまま終わった気がする。これからまた外伝があるのか。それとも、今までに出したヒントから読者が想像することを望んでいるのか。どちらにしろ、普通の一般的な読者では、解答を知らないまま、または読み取れないまま終わったことが多いのではないかと思う。
それを非難するつもりはないし、これはこれで良かったのだという気がする。多くの謎に対する解答編とはなり得なかったかもしれないが、シリーズ最終巻としての役割は十分に果たしている。だから、シリーズをずっと読んできた人には、やはりある種の満足感を与えてくれると思うし、逆に一つのミステリーとして完成度を求める人には多くの不満を与えるかもしれない。
ボクはその両方をあわせて感じた一人ではあるのだが、とりあえずは読み終えて満足している。ただ、現段階では再読をする気はしない。これはシリーズ全体についてである。そういう意味では、ちょっとシリーズ全体の価値を低める最終巻になってしまった気がして、もうちょっと違う最終巻もあり得たのではないかと、少し残念な気もしている。
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みるみる理解できる相対性理論―特殊相対論も一般相対論も実はむずかしくなかった!
2005年10月20日 読書
ISBN:4315517615 大型本 佐藤 勝彦 ニュートンプレス 2005/09 ¥1,995
相対性理論については何も知らなかったのに、なんとなくだけどわかった気がした。しかも、面白く読めたし、これはおすすめ本かも。
ただ、時間や空間が絶対ではないってのには驚かされた。人や場所などといった条件によって、時間が長くなったり短くなったりするなんて信じらんない。それに、距離だって伸びたり縮んだりする訳でしょ。なんだか、おかしな話だよね。
でも、世の中ってそんなものかもしれない。僕は法律の勉強とかもするんだけど、何が正しいかなんて、いろんな人がいろんなことを言うからわかんない。だからこそ、法律学なんてモノがあって、自分の正当性を議論してるんだろうけど、結局はきっとどれも絶対的に、誰にとっても正しいという訳じゃないのよね。きっと相対性理論と同じで、立場によって正しさの尺度は違うし、その「正しさ」自体が人によって全く異なることだってあるんだろう。
みんな、こういう柔軟な考え方をしてくれれば、世の中に争いなんてなくなるんだろうけど、相対性理論を社会科学にも応用するってのは、相対性理論の考え方が自然科学の世界でもなかなか理解されなかったのと同じことで、やはり難しいことなのかなぁ。
相対性理論については何も知らなかったのに、なんとなくだけどわかった気がした。しかも、面白く読めたし、これはおすすめ本かも。
ただ、時間や空間が絶対ではないってのには驚かされた。人や場所などといった条件によって、時間が長くなったり短くなったりするなんて信じらんない。それに、距離だって伸びたり縮んだりする訳でしょ。なんだか、おかしな話だよね。
でも、世の中ってそんなものかもしれない。僕は法律の勉強とかもするんだけど、何が正しいかなんて、いろんな人がいろんなことを言うからわかんない。だからこそ、法律学なんてモノがあって、自分の正当性を議論してるんだろうけど、結局はきっとどれも絶対的に、誰にとっても正しいという訳じゃないのよね。きっと相対性理論と同じで、立場によって正しさの尺度は違うし、その「正しさ」自体が人によって全く異なることだってあるんだろう。
みんな、こういう柔軟な考え方をしてくれれば、世の中に争いなんてなくなるんだろうけど、相対性理論を社会科学にも応用するってのは、相対性理論の考え方が自然科学の世界でもなかなか理解されなかったのと同じことで、やはり難しいことなのかなぁ。
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ISBN:4061824465 新書 倉知 淳 講談社 2005/09/06 ¥945
いいねぇ、猫丸先輩。本当にこんな人がいたとして、果たして小説の中のように人気がある人になるのかどうかは知らないけど、でも、やっぱり愛すべき人なんだろうな。
だって、日常生活で本格ミステリーしちゃうんだもんね。この本の中でだって、別に殺人が起こるわけではないし、そもそも犯罪といいうるかどうかもわからないようなことばかり。でも、よくわからない事件に対して、本当かどうかはわからないけど、それなりに説得的な説明をしちゃう。すごいよなぁ。こんな人がいたら、確かに面白いのかもしれないなぁ。
ただ、惜しむらくは、そういう日常が舞台なだけに、あまりワクワクドキドキはしないし、たまに途中の場面設定に使われるストーリー説明の部分なんかは読み飛ばしたくなることもあったりして、一気に読破できた割には満足感に乏しかったことかな。
まっ、そんなこと言ってもまた買っちゃうんだろうけど……
いいねぇ、猫丸先輩。本当にこんな人がいたとして、果たして小説の中のように人気がある人になるのかどうかは知らないけど、でも、やっぱり愛すべき人なんだろうな。
だって、日常生活で本格ミステリーしちゃうんだもんね。この本の中でだって、別に殺人が起こるわけではないし、そもそも犯罪といいうるかどうかもわからないようなことばかり。でも、よくわからない事件に対して、本当かどうかはわからないけど、それなりに説得的な説明をしちゃう。すごいよなぁ。こんな人がいたら、確かに面白いのかもしれないなぁ。
ただ、惜しむらくは、そういう日常が舞台なだけに、あまりワクワクドキドキはしないし、たまに途中の場面設定に使われるストーリー説明の部分なんかは読み飛ばしたくなることもあったりして、一気に読破できた割には満足感に乏しかったことかな。
まっ、そんなこと言ってもまた買っちゃうんだろうけど……
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ISBN:4061824449 新書 蘇部 健一 講談社 2005/10 ¥840
「六枚のとんかつ」の第2弾が出た。この作家については賛否両論、昔から様々な意見があるわけだが、どちらかというと擁護派のボクは、発売されるとさっそく買ってみた。
結論から言えば、駄作。久しぶりにブックオフ行きの作品である。
このように書くと、否定派の人は「当たり前じゃないか」と言われるかもしれないが、ボクの書棚には「六枚のとんかつ」も「動かぬ証拠」も「木乃伊男」も並んでいる。つまり、どちらかというとファンに近い。でも、この本については、さすがにいただけないと感じた。
ボクは読んでいて、なんでこんなものを書いてしまったのかなぁと思った。しかし、その疑問に対する解答はあとがきを読んで、何となくわかったような気がした。思うに、彼は自分の作品に自信がなく、また自分の作風が嫌いなのである。きっとその原因は、たくさんの人から非難されたことに由来するのであろう。それで、彼はきっとこの方向性が間違っていると感じてしまったに違いない。
ボクがこの本を駄作と呼ぶ理由はいくつかある。
まず第一に、各作品にイラストが入っているのだが、その必要性に乏しい作品が多いこと。言い換えれば、イラストを入れたいので無理に入れたという作品がほとんどで、なければないで作品が成立するものがほとんどであったということである。一般的にはこれを本末転倒というのであり、かつての「動かぬ証拠」などは、まさにイラストが作品の一部としてうまく組み込まれていただけに、同じ作者の作品としては失望を禁じ得ない。
また第二には、アホバカミステリーを捨てて、妙にきれいな話を書きたがっていることである。この作者の持ち味は、そんなバカなと言いたくなるような、他のミステリー作家なら決して書かないトリックを平気で書くような、そういうハジケッぷりにあると思う。しかし、彼はストーリーテラーになりたいらしく、きれいなストーリーを良しとしているようだ。ただ残念ながら、彼の文章力も、ストーリーの構成力も、トリックの発想力も、それを許してはくれない。はっきり言って、彼のそっちの方の能力はそれほど高くないのである。だから、そちらで勝負をしようとすると、もっと上手な人がいくらでもいるために、むしろアラばかりが目立ってしまう。彼は自分の強みで勝負すべきであり、他の人たちと同じ土俵で勝負すべき人ではなかったのに、あえて同じ土俵にのぼろうとしているのである。これでは勝負など目に見えている。
そして、第三には、話の最初に引用されている文章の存在である。まるで誰かさんのように、短編の一編一編について最初に本の一節などが引用されているのだが、それがどう効果的なのかボクにはよくわからなかった。ただ、格好良かったから真似てみただけなのか、それとも創作的な理由があったのか、理由はよくわからない。ただ、このような形式をこよなく愛する作家として、誰かさんの名前がすぐに浮かんでしまい、しかも彼のシリーズもボクの書棚には全作並んでいるということもあって、どうせやるならそれを茶化すようなやり方でやるか、さもなければ「どこから見つけてきたんだ」と言いたくなるような、トンでも本からのトンでも言葉を使って欲しいと考えてしまい、まじめに引用された各章の引用文については、本文のおふざけぶりもあって、妙な中途半端さを感じ、興ざめした。
長々と書いてきたのだが、最終的にボクが言いたいことは簡単である。
「己を知れ!」
己を知り、敵を知れば、百戦も危うくはならないのである。自分に欠けているところは、それをきちんと認識した上でそれを受け入れ、自分の強みについては、それを伸ばすようにして欲しい。本当に才能にあふれているのであれば、確かにメインストリートで勝負することもできるだろうが、そうでないならば誰も目を付けていないところで、その分野の第一人者になるというのもありなのである。ぜひとも、この作者には、もう一度自分を見つめ直し、自分の方向性をいうものを考え直して欲しいものである。
「六枚のとんかつ」の第2弾が出た。この作家については賛否両論、昔から様々な意見があるわけだが、どちらかというと擁護派のボクは、発売されるとさっそく買ってみた。
結論から言えば、駄作。久しぶりにブックオフ行きの作品である。
このように書くと、否定派の人は「当たり前じゃないか」と言われるかもしれないが、ボクの書棚には「六枚のとんかつ」も「動かぬ証拠」も「木乃伊男」も並んでいる。つまり、どちらかというとファンに近い。でも、この本については、さすがにいただけないと感じた。
ボクは読んでいて、なんでこんなものを書いてしまったのかなぁと思った。しかし、その疑問に対する解答はあとがきを読んで、何となくわかったような気がした。思うに、彼は自分の作品に自信がなく、また自分の作風が嫌いなのである。きっとその原因は、たくさんの人から非難されたことに由来するのであろう。それで、彼はきっとこの方向性が間違っていると感じてしまったに違いない。
ボクがこの本を駄作と呼ぶ理由はいくつかある。
まず第一に、各作品にイラストが入っているのだが、その必要性に乏しい作品が多いこと。言い換えれば、イラストを入れたいので無理に入れたという作品がほとんどで、なければないで作品が成立するものがほとんどであったということである。一般的にはこれを本末転倒というのであり、かつての「動かぬ証拠」などは、まさにイラストが作品の一部としてうまく組み込まれていただけに、同じ作者の作品としては失望を禁じ得ない。
また第二には、アホバカミステリーを捨てて、妙にきれいな話を書きたがっていることである。この作者の持ち味は、そんなバカなと言いたくなるような、他のミステリー作家なら決して書かないトリックを平気で書くような、そういうハジケッぷりにあると思う。しかし、彼はストーリーテラーになりたいらしく、きれいなストーリーを良しとしているようだ。ただ残念ながら、彼の文章力も、ストーリーの構成力も、トリックの発想力も、それを許してはくれない。はっきり言って、彼のそっちの方の能力はそれほど高くないのである。だから、そちらで勝負をしようとすると、もっと上手な人がいくらでもいるために、むしろアラばかりが目立ってしまう。彼は自分の強みで勝負すべきであり、他の人たちと同じ土俵で勝負すべき人ではなかったのに、あえて同じ土俵にのぼろうとしているのである。これでは勝負など目に見えている。
そして、第三には、話の最初に引用されている文章の存在である。まるで誰かさんのように、短編の一編一編について最初に本の一節などが引用されているのだが、それがどう効果的なのかボクにはよくわからなかった。ただ、格好良かったから真似てみただけなのか、それとも創作的な理由があったのか、理由はよくわからない。ただ、このような形式をこよなく愛する作家として、誰かさんの名前がすぐに浮かんでしまい、しかも彼のシリーズもボクの書棚には全作並んでいるということもあって、どうせやるならそれを茶化すようなやり方でやるか、さもなければ「どこから見つけてきたんだ」と言いたくなるような、トンでも本からのトンでも言葉を使って欲しいと考えてしまい、まじめに引用された各章の引用文については、本文のおふざけぶりもあって、妙な中途半端さを感じ、興ざめした。
長々と書いてきたのだが、最終的にボクが言いたいことは簡単である。
「己を知れ!」
己を知り、敵を知れば、百戦も危うくはならないのである。自分に欠けているところは、それをきちんと認識した上でそれを受け入れ、自分の強みについては、それを伸ばすようにして欲しい。本当に才能にあふれているのであれば、確かにメインストリートで勝負することもできるだろうが、そうでないならば誰も目を付けていないところで、その分野の第一人者になるというのもありなのである。ぜひとも、この作者には、もう一度自分を見つめ直し、自分の方向性をいうものを考え直して欲しいものである。
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ISBN:4061824511 新書 森 博嗣 講談社 2005/09/06 ¥945
「すべてがFになる」に驚かされ、理系的発想・発言の世界にはまってからずっと買い続けているのだが、ふと最初のシリーズが終わった段階でやめておけば良かったのかもしれないと思うことがある。それでも、それ以降も買い続けてとうとうここまで来てしまったのだが、読み終わってみるとやっぱり「やめておいても良かったかな」と思ってしまう。
シリーズ全体を通して言えることだが、これら一連の作品は基本的にトリックで読ませるというほどの作品ではなく、むしろ人間関係などを含めた、これまでのシリーズ全体を包含する世界観のようなものを読み解くことに力点を置くべき作品である。ただ、それはわかっているのだが、僕の場合はどうしても個々の作品のミステリーとしての読み応えを要求したくなってしまう。僕がミステリーバカだからなのだろうか、なんだか読み終わっても満足感がないのである。
今回の作品も例外ではなく、ミステリー的要素よりも、登場人物の会話などを楽しむ方が良さそうな作品と感じた。この人の作品は、最初からすべて本棚にきちんと並んでいるので、なんだかんだと言いながら、きっとこれからも買い続けてしまうのだろうが、シリーズ中の一作ではない、単体でも名が残るような作品を、今度こそ書いて欲しいと願うばかりである。
、
「すべてがFになる」に驚かされ、理系的発想・発言の世界にはまってからずっと買い続けているのだが、ふと最初のシリーズが終わった段階でやめておけば良かったのかもしれないと思うことがある。それでも、それ以降も買い続けてとうとうここまで来てしまったのだが、読み終わってみるとやっぱり「やめておいても良かったかな」と思ってしまう。
シリーズ全体を通して言えることだが、これら一連の作品は基本的にトリックで読ませるというほどの作品ではなく、むしろ人間関係などを含めた、これまでのシリーズ全体を包含する世界観のようなものを読み解くことに力点を置くべき作品である。ただ、それはわかっているのだが、僕の場合はどうしても個々の作品のミステリーとしての読み応えを要求したくなってしまう。僕がミステリーバカだからなのだろうか、なんだか読み終わっても満足感がないのである。
今回の作品も例外ではなく、ミステリー的要素よりも、登場人物の会話などを楽しむ方が良さそうな作品と感じた。この人の作品は、最初からすべて本棚にきちんと並んでいるので、なんだかんだと言いながら、きっとこれからも買い続けてしまうのだろうが、シリーズ中の一作ではない、単体でも名が残るような作品を、今度こそ書いて欲しいと願うばかりである。
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