ISBN:4101315116 文庫 湯本 香樹実 新潮社 1994/03 ¥420

 今さらだが、今日書くのはこの本についてである。ずっと気にはなっていたのだが、なんだか話題になっているときに買うのは何となく気が引け、それでてその時期が終わってしまうと平積みにならなくなってしまって、これまた何となく忘れてしまっていたという一冊であった。

 実際に読んでみると、題材が”人の死”という重いものだけに、やはり読ませるパワーはそれほど強くはなかったのだが、それでも静かに、一気に読了してしまった。ストーリー展開は予想通りだし、途中の展開は若干わかりにくい部分もあるのだが、それでも子供たちとおじいさんの心の変化は心地よく伝わってきて、なんとなく癒されたような気分がした。
 読む前に想像していたのは、もっと”死”というものを真っ正面からとらえていて、何か考えさせられるようなお話ではないか、ということだった。しかし実際に読んでみるとそうではなく、本当の主題はまさに題名の中にあるのだということは、読了後に気が付いたことであり、それがまた少し、何か心を落ち着けてくれたような気がした。

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