ISBN:4061824511 新書 森 博嗣 講談社 2005/09/06 ¥945

 「すべてがFになる」に驚かされ、理系的発想・発言の世界にはまってからずっと買い続けているのだが、ふと最初のシリーズが終わった段階でやめておけば良かったのかもしれないと思うことがある。それでも、それ以降も買い続けてとうとうここまで来てしまったのだが、読み終わってみるとやっぱり「やめておいても良かったかな」と思ってしまう。
 シリーズ全体を通して言えることだが、これら一連の作品は基本的にトリックで読ませるというほどの作品ではなく、むしろ人間関係などを含めた、これまでのシリーズ全体を包含する世界観のようなものを読み解くことに力点を置くべき作品である。ただ、それはわかっているのだが、僕の場合はどうしても個々の作品のミステリーとしての読み応えを要求したくなってしまう。僕がミステリーバカだからなのだろうか、なんだか読み終わっても満足感がないのである。
 今回の作品も例外ではなく、ミステリー的要素よりも、登場人物の会話などを楽しむ方が良さそうな作品と感じた。この人の作品は、最初からすべて本棚にきちんと並んでいるので、なんだかんだと言いながら、きっとこれからも買い続けてしまうのだろうが、シリーズ中の一作ではない、単体でも名が残るような作品を、今度こそ書いて欲しいと願うばかりである。
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