ISBN:4061825135 新書 歌野 晶午 講談社 ¥1,040

 今月は講談社ノベルスが大漁で、お金がかかって仕方がない。その中で、さっき読み終わったのがコレ。本当は、森先生のを先に読んだので、そちらを書こうと思ったのだが、読んだらこっちを書きたくなったので、こちらを先に書くことにした。ということで、感想。

 読むのに、実に一日。というか、行きの電車で読み始めて、帰りの電車とさっき空いた時間で読了。そういう意味では、非常に読みやすかったし、ハマった。
 話の展開もスムーズで、ネタが読めるところもあったり、読めないところもあったりで、なかなか楽しませてもらえた。
 そういう意味では、なかなか会心の作と思われ、久しぶりにミステリーらしいミステリーを読んだような気がした。
 何しろ、森先生をはじめとして、なんだか最近はストーリー重視の作品が多く、キャラクターで読ませるのはよいのだが、ミステリーっぽい驚きとかは、ちょっと弱くなってきている。そういう意味では、この作品はミステリーらしさが感じられ、なかなか良いように思われた。

 ただし、これはネタバレになるからあまり書けないが、最終章の評価は微妙。この最終章こそが、いろいろなところと結びつくような気がするので、重要であるような気はする。また、最終章がなかったとすると、この展開は始まる前から読めているところがあるので、これで終わるのも微妙。しかし、そうであったとしても、この終わり方自体も微妙という意味では、終わらせ方の難しさというのが感じられた。

 ボクは、再読するかどうかということを、本の評価に換えることが多い。そういう意味では、今のところ、再読したいとは思っていない。これは、綾辻氏の昔の作品のように、読者に対して伏線を提示しているというのではなく、作中人物に対して伏線が提示され、その解答が示されるという構造になっていることによるような気がする。その作中人物同士で解明された結末に対して、その外にいるボクは、もう納得するよりほかなく、作中人物同士で伏線が回収され、ネタ晴らしがされていくことによって、もうそれ以上の解答はないように思わされている。いや、思わされているだけなのかもしれないが、ボクとしては満足した状態になっている。だからこそ、もう読まなくてもいいような気になっているのではないかという気がする。

 この作品に続編が作られることはもうないのだろうが、なんか続編が読みたいような気がする。しかし、その一方で続編ができたら失望するだろうという強い確信にも似た感情を抱いており、このような二重人格状態に置かれたボクは、もうきっと一人二役で、この作品の評価については議論をし続けるしかないのだろうと思う。

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