私が彼を殺した

2007年3月16日 読書
ISBN:406182046X 単行本(ソフトカバー) 東野 圭吾 講談社 1999/02 ¥840

 図書館で見かけ、借りてきて読み始めたのだが、なんとなく読んだ気もするし、読んでない気もする。俺も年を取ったもんだ。昔はこんなことはなかったのになぁ……
 なんてことを思いつつ、とりあえず最後まで読了してみた。

 読者への挑戦と言わんばかりに、最後まで犯人を明かさないというチャレンジは、ある意味賞賛に値する。実際、さらっと読み終わった段階で、ボクは犯人がわからなかった。
 ただ、アイデアの斬新さはスゴいにしても、面白かったかと言われると、それがまた微妙。個人的には再読をして、犯人を見つけようという気にはならなかった。
 結局、犯人はわからなかったので、ネットで検索をするハメになったのだが、その中で誰かが書いていた、解答編を読みたかったという意見には、共感を覚えた。

 解答編をつけると、普通の推理小説になってしまう。だから、彼はそこをなくして新しい試みをしたかったのだろうが、これはやはり一部のマニアをのぞけば、かなり厳しい試みであったのではなかろうか。
 というのも、そこまで真剣に推理小説を読み込む人というのは、それほど多くはないと思うからだ。

 さらっと読んでいく中で、「もしかしたら」と思うアイデアがなんとなく浮かぶ。しかし、明確な形にはならない。ただ、その『なんとなく』が最後には正しい解答の一部を含んでいたことを知り、それで「俺は解答がわかった」という気になる。そのくらいの方が、推理小説というのは面白いのではないかという気がする。

 読者というのは、本当の探偵になりたいのではない。探偵になった気分を味わいたいだけなのだ。そういう意味では、多くの読者にとってはニーズを取り違えた作品になってしまったのではないかという気がするし、その一方で「こんな作品が読みたかった」と拍手喝采している読者もいるであろうことは想像に難くない。
 ただ、残念なのは、ボク自身はどちらかというと前者だったことであり、また同様の試みがなされた場合には、挑戦してみたいとは思うものの、半分興味がなかったりもしてしまうのである。

コメント